読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

GO!GO!L'ATALANTE!!

ゴー!ゴー!アタラント号!! 映画☆おにいさんのBlog

映画☆おにいさんのシネマ・カフェ vol.7「本のある場所」

本日はお集まりいただきありがとうございます。映画☆おにいさんのシネマ・カフェ第7回「本のある場所」にお集まりいただきありがとうございます。今回、水曜文庫さんでシネマカフェを行うことになりましたので、店主の市原さんと相談しまして「本のある場所」としました。「本」が原作というのではなく、「本」そのものを映画ではどう扱っているか。印象的なものを集めてみました。言うまでもなく、本に掲載されているのは、写真や図もありますが、基本「文字」です。それに対して、「映画」は「映像」と「音」であって、異なるメディアです。そこで映画は本をどう扱っているのか。古今東西すべての映画を見れる訳ではないですが、印象的なものを集めましたので見ていきたいとおもいます。ではまず参加者の方々の自己紹介とテーマ「本のある場所」で思い浮かぶ映画を言っていただきましょう。

〈自己紹介+映画〉

ありがとうございます。では、映画を見ていきましょう。

●『三人の名付け親』(ジョン・フォード,1948)

 ジョン・フォードは『駅馬車』だったり『静かなる男』だったり、『男の敵』『怒りの葡萄』『荒野の女たち』『騎兵隊』『ドノバン珊瑚礁』...まだまだ面白い映画がいっぱいありますね。今日は『三人の名付け親』の、三人の銀行強盗が赤ちゃんの世話をするシーンを見てみましょう。三人は赤ちゃんの世話の仕方が分からない。なにか手がかりはないかと母親の荷物を漁っていたら一冊の育児本を見つけるんですね。

f:id:gogolatalante:20150129131836j:plain

書かれていることに翻弄される3人が面白いですね。本を読む、赤子を抱くことで見えてくる関係性も面白いですね。

もう一場面、『三人の名付け親』から見てみましょう。三人の中で一番若いキッド(ハリー・ケリー・ジュニア)がケガと砂漠での逃亡に消耗しきって死んでしまう場面を見てみましょう。

f:id:gogolatalante:20150131145053p:plain

銀行強盗が最後、聖書の朗読を頼むんですよ。自分が極限の状態において、死ぬ間際に望むことが赤ん坊の心配と詩篇の朗読、朗誦なんですね。宗教のことはよくわかりませんが、感動的ですね。泣けますね。

 

●『わが谷は緑なりき』(ジョン・フォード,1941)

f:id:gogolatalante:20150129133332j:plain

次も、ジョン・フォードの映画から抜粋を観てみましょう。『わが谷は緑なりき』です。炭坑町のお話なんですが、主人公は凍傷になってしまって、もう歩けないかもしれないとお医者さんに言われてしまいます。そこで、牧師は主人公に本を読むことを勧めます。『宝島』から始まって、いろんな本を読みます。窓際に本が増えていきます。参加者の方の意見にありました、だんだん暖かくなり鳥が窓辺にやってきて、主人公が家族に「春なの?」って聞くんですね。本を読むことで「春」を知ったんですね。鳥肌が立ちますね。すごいシーンです。

 

●『すべての革命はのるかそるかである』(ストローブ=ユイレ,1977)

 ここまでは、ジョン・フォードの映画で本のある場所を見てきました。次は、ストローブ=ユイレの映画『すべての革命はのるかそるかである』を見てみましょう。マラルメの詩「賽の一振り」を朗誦している映画です。読んでいる場所は墓地の芝生なんですが、このペール・ラシェーズ墓地(Cimetiere du Pere Lachaise | Visite virtuelle du Cimetiere | Cemetery's virtualtour)は、普仏戦争後の1871年にパリ・コミューンという市民軍の蜂起がなされて、その最後の拠点となった場所でもありますね。革命家達の聖地ですね。ここでいろんな言語を母語とする男女9人が交互に朗誦していきます。

 

 

原作の『賽の一振り』ですが、このようなテクストになっています。

 

f:id:gogolatalante:20150202115018j:plain

 

日本語訳されたものもあったので、載せておきます。

 

f:id:gogolatalante:20150202115025j:plain

フォント・サイズ・配置がばらばらで、どのように読むのが正しいのか分かりませんね。これを原作に映画を撮ろうと考える感性にまず驚いてしまいますが、この詩を原作として映画を撮ったと考えれば、あのような映画表現になるのが何となく分かりますね。

そういえば、誰が仰っていたか失念してしまったのですが、「ヘルダーリンの詩は原語で音読すると、言葉と言葉が呼応しているのが分かる」と評していていました。ストローブ=ユイレは、ソポクレスの「アンティゴネ」をヘルダーリンがドイツ語に訳し、それを基にブレヒトが1948年に改訂した版を使って、『アンティゴネ』を撮ってますから、そのようなこと考えた上での映画様式にしていると考えられます。さらにストローブは「カフカをフランス語でなくドイツ語で読むと明晰だ」と言っています。私には分かり兼ねますが、どうやらそういうところもあるようですね。

ちょっと画質も音もあんまりなので、もうひとつ観てみましょう。

●『アーノルト・シェーンベルクの《映画の一場面のための音楽》入門』(ストローブ・ユイレ,1973)

15分だけの作品ですのでこちらも全編見てみましょう。1927年、20世紀の西洋音楽に最も影響を与えたとされ、12音技法を確立した作曲家シェーンベルクが、友人の画家カンディンスキー反ユダヤ主義的な発言に怒って、書いた手紙の朗読がなされます。掛かっている音楽はシェーンベルクが架空の映画音楽として書いた曲であります。ブレヒトが1935年に行った反資本主義演説も引用されています。

f:id:gogolatalante:20150129133945j:plain

どちらもある場所でテキストがあって読んでいますね。演劇的でありながら、演劇的でないようにも聴こえますね。普段の発声とはちょっと違うように聴こえますね。この人はどんな人なんでしょうね。手や膝が官能的ですね。切り取られた石のようにこの人たちは音と映像になって存在していますね。ストローブは、「存在するものは存在し(ドライヤー『奇跡』)、存在しないもの(ドライヤーのイエス・キリスト)はまったく存在しないのである」と言っていますね。

 

●『セリーヌとジュリーは船でゆく』(ジャック・リヴェット,1974)

続いて、ジャック・リヴェットの『セリーヌとジュリーは船でゆく』から、『不思議の国のアリス』のような出会いの次の日、図書館でのシーンを見てみましょう。

f:id:gogolatalante:20150129134152j:plain

こんな司書や利用者がいたら嫌ですね。煙草は吸うわ、本にいたずら書きはするわ、破るわで。笑えますが同時に不安になってしまいますね。現実なのか幻想なのか分からなくなりますね。フィックスの画面と手持ちカメラ対比によって、よけい不安定な感じですね。

 

●『天国は待ってくれる』(エルンスト・ルビッチ,1943)

今度は『天国は待ってくれる』です。本屋という場所が物語を推進します。街で見かけた美女を追っていくうちに本屋へ入ります。女性が本を探しているようなので、本屋の店員を装い話しかけます。

f:id:gogolatalante:20150129134409j:plain

洒落ていますね。ここで女性が欲しがっていた『夫を幸せにする方法』という本が出て来ていますが、後半にも効いてくるんですね。途中、二人だけの世界になってしまうのも面白いですね。ルビッチと言えば、『青髯八人目の妻』にも本が出てきますね。妻を手なずけるためにどうすればいいか考えていたところ、主人公が『じゃじゃ馬ならし』を読んで「これだ!」と思うんですね。早速妻のところに行ってビンタするんですが、すぐにビンタ仕返されてしまうんですね。とっても可笑しいので、是非観て下さい。フォードの『三人の名付け親』もそうでしたが、How to本に従って行動すると大体可笑しなことになりますね。自分の頭で考えろということでしょうか。

 

●『ファウスト』(F・W・ムルナウ,1926)

サンライズ』でも有名なムルナウ監督ですが、ゲーテの『ファウスト』を原作にして撮っています。 


学者であるファウストがこれまでの知識を総動員しても病気を防げなかった。不甲斐なく感じ、本を次から次に燃やしてしまいます。まだ本が高価で貴重であった時代であったから余計に胸が熱くなりますね。燃やす最中にたまたま開いた本から悪魔を召還する方法を見つけます。召還するシーンの迫力は凄かったですね。サイレント映画だからといって侮れないんですね。逆に、むかしの映画の方が凄かったのではないかという気にさせられますね。

 

●『世界の全ての記憶』(アラン・レネ,1956)

では最後に、アラン・レネの『世界の全ての記憶』を見てみましょう。フランス国立図書館のドキュメンタリーです。アラン・レネは『二十四時間の情事』『夜と霧』の監督ですね。そういえば『断層紀』の波多野監督もアラン・レネが好きだと言っていましたね。プルーストみたいに記憶にまつわる映画を多く撮っているように思えるんですが、今回のドキュメンタリーもそのままタイトルに記憶と入っています。

独白と言っていいようなナレーションで映画は進んでいきましたが、最終的にどういうような建物なのかよく分かりませんでしたね。本を運ぶ人や仕組みが次から次に紹介されているはずなんですが!知識と同じように全体を掴むのは容易ではないということでしょうか。

以上で、映画☆おにいさんのシネマ・カフェvol.7「本のある場所」を終えたいと思います。ムルナウからストローブ=ユイレまで、今日だけで8本9シーンを観てきました。抜粋箇所だけでなく一本通してみると印象ががらりと変わると思いますので、ぜひレンタルビデオ店で借りる等してご覧になって下さい。また、これから映画をご覧になるときは「本のある場所」における様々なドラマを楽しんでくださればと思います。

 本日はありがとうございました。
(実際のシネマ・カフェの原稿に加筆・修正を行った)

 

●その上映候補だった作品、参加者から挙がった映画、話題に挙がった映画

素晴らしき放浪者』『ベルリン、天使の詩』『シャーシャンクの空に』『女は女である』『右側に気をつけろ』『ざくろの色』『ローラ』『青髯 八人目の妻』『中国女』『コルネイユブレヒト』『レディ・イン・ザ・ウォーター』『華氏451』『バートンフィンク』『三つ数えろ』『珈琲時光』『ノッティングヒルの恋人』『ビフォアサンセット』『バールーフ・デ・スピノザの仕事 1632–1677』『東京物語

『アンナ マクダレーナ バッハの年代記』



『ジャッカルとアラブ人』



サンライズ



『奇跡』